デューク・ピアソン「ハウ・インセンシティヴ」

ハウ・インセンシティヴ

ハウ・インセンシティヴ

リリカルなピアニストでもあり、アレンジャー、プロデューサーとしても活躍したデューク・ピアソン、1969年の作品。カラフルで爽やかなアルバムです。


ほぼ全曲にコーラス、ヴォーカルをフィーチュアしているのがこのアルバムの大きな特色です。前半の主役はニューヨーク・グループ・シンガーズ・ビッグ・バンドによるゴージャスなコーラス。彼等は男女あわせて総勢17名という大所帯のコーラス・グループで、「星影のステラ」での厚みのあるハーモニーや「ギヴ・ミー・ユア・ラヴ」でのゴスペル・クワイア風サウンド、華やかな「リトル・ソング」など多彩な響きでコーラスの醍醐味をたっぷりと堪能させてくれます。


後半はフローラ・プリムのヴォーカルを中心に据えてボサノヴァへのアプローチを聴かせてくれます。軽快なジャズ・サンバ「サンダリア・デラ」、プリムのしっとりとした歌唱が美しいデオダート作品「ティアーズ」、アントニオ・カルロス・ジョビンの名曲「ラメント」とどれも爽快で心地よい仕上がり。


ピアソンはピアノやエレピ、時にはフリューゲル・ホルンも駆使して音楽に彩りを与えていますがアルバムの主役というよりサポートに徹しているという印象。しかしタイトル・チューンの「ハウ・インセンシティヴ」(もちろん、これもジョビンの名曲)は彼のリリカルな持ち味が存分に発揮されたピアノ・ソロ。2分程度の小品ですが淡い哀しみをたたえた抒情的な演奏で、これによってアルバムの味わいがより深まっているといえるでしょう。