バッハ・コレギウム・ジャパン「マタイ受難曲(初期稿)BWV244b」@ミューザ川崎シンフォニーホール

いつかは実演に接してみたいと思っていたバッハの「マタイ受難曲」ですが、ようやく念願が叶いました。ミューザ川崎シンフォニーホールも一度は行ってみたかったコンサートホールなのでこちらもうれしかったですね。


今回の「マタイ」は初期稿に基づく演奏という珍しいもの。さらに合唱団の編成にも独自の工夫を凝らしたという試みでした。初期稿について詳しくはこちらをどうぞ。


合唱団の編成については鈴木雅明の文章を引用します。

マタイ受難曲」といえば、二群に分かれた二重合唱が用いられることはいうまでもありませんが、しかし、よく見てみると、第1合唱と第2合唱とは、ずいぶん異なった機能を持っています。第1合唱が単独で歌うときは、常に聖書の聖句そのものが委ねられており、それに対して第2合唱は、テノールやアルトのアリアに挿入されるコラールが、中心的な役割です。そこで、今回この原型を再現するにあたっては、両合唱の機能の違いを際立たせるため、両者に不均等な数の声楽家を配置し、より小規模なソリスト群としての第1合唱と、より大きな編成の第2合唱と対比してみたいと考えています。

この試みが従来の演奏と比べてどういう成果をあげていたのか、などということは私の手にあまりますが、生演奏を見ることによって、楽曲の構造がよりはっきりと理解できるようになったのは大きな収穫でした。BCJの演奏はことさらにドラマ性を強調することはしないで、音楽の流れの中で自然に起伏をつけていってるような印象。普段は家にあるリヒター盤やクレンペラー盤でこの曲に接している者にとっては大変新鮮に感じました。小編成のため各声部の動きが聴き取りやすく、アーティキュレーションのつけ方によるものでしょうか、フレーズの輪郭がくっきりして聴こえましたね。また、まろやかで透明感のある響きが心地よい。特に管楽器の音色の美しさに感銘を受けました。ホールの音響も素晴らしかったと思います。休憩をはさんでおよそ3時間の長丁場でしたが最後まで集中して楽しめました。また機会があればBCJの演奏会に行ってみたいですね。