スタニスワフ・レム「虚数」
- 作者: スタニスワフレム,Stanislaw Lem,長谷見一雄,西成彦,沼野充義
- 出版社/メーカー: 国書刊行会
- 発売日: 1998/02/01
- メディア: 単行本
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タルコフスキーによる映画「惑星ソラリス」(冨田勲がバッハの「3声のインヴェンション」をシンセサイズして「ソラリスの海」という題名をつけたことも印象深い)に接して以来、いつかじっくりと読みたいと思い続けていた作家の一人です。残念です。
私の所持しているレムの作品は「虚数」のほかには「完全な真空」だけです。どちらも国書刊行会の「文学の冒険」シリーズの中の1冊として上梓された作品で、共に「架空の書物の序文集」という体裁をとっています。
これはホルヘ・ルイス・ボルヘスが得意としていた手法で、レム自身もその影響を受けて作品を構想したことを明言しているのですが、似ているのは手法のみで内容は大きく異なるもの。逆説やだまし絵的なトリックを駆使して形而上的な思弁の迷路に人を引きずりこむ、円環の迷宮王ボルヘスに対して、科学的な発想を基底にしながらも想像力を奔放に展開し、知の天球を天馬の如く羽ばたいていくのがレムといった印象があります。初読の際はそのスケールに圧倒されました。
もう一度手元にあるレムの作品を読み返し、「枯草熱」や「フィアスコ」といった長編にも取り組んでいきたいですね。