Fresh Maggots「Fresh Maggots」

Fresh Maggots

Fresh Maggots

2曲目の「ローズマリーヒル」。キラキラしたアコースティック・ギターアルペジオにほどよい甘さを持つ落ち着いたヴォーカル。そこにグロッケン・シュピールがまぶされ、控えめなストリングスがサウンドに深みをあたえている素晴らしい出来栄えです。まさにキーフによる幻想的なジャケットのイメージ通りの、夢幻的な美しい音。こういう感じの曲だけでまとめられたら、このアルバムはブリティッシュ・フォークの隠れた名盤として語り継がれていたと思います。


しかしアルバム制作当時(1971年)、19歳だったメンバー2人はそれだけで大人しくまとまるのを是としなかったのでしょう。いくつかの曲で彼等が持ち込んだのは、うなりをあげるファズ・ギターの響き。これによって、彼等が唯一残したこのアルバムは普通の隠れた名盤から異色のプログレッシヴ・フォーク名盤となったのです。静かな曲でまどろんでいると、いきなりのファズギターで覚醒させられる。ベース、ドラムスといったリズム・セクションは導入されず、ロック的な要素は無い音楽なので、聴き始めのうちはなんだか妙な気分になります。だけど慣れてくるとこのファズ・ギターが幻想的な雰囲気を高めているように思えてくるのが不思議。これはやはり基本的に曲が良いからでしょう。ありそうでない個性を持ったユニットです。私が持っているのは去年再発されたリマスター盤なので音質は良いのですが、ジャケットも好きなので紙ジャケでも持っておきたい一枚ですね。


もっとも「200CDブリティッシュ・ロック―1950‐2003リアル英国音楽ディスクガイド (立風書房200音楽書シリーズ)」のイアン・サウスワースによると

マゴットというのは、スラングで奇抜な発想という意味もあるけど、イングランドの釣り人の必需品―蝿の幼虫、ウジ虫のことである。このジャケットで何の意味もなく、ふたりはキタネー池のほとりの木の上にいるわけじゃない。

とのこと。やはり一筋縄ではいかないヤツラのようです(笑)。