「オリジナル・サウンドトラックによる 武満徹 映画音楽」〜篠田正浩監督作品篇〜

オリジナル・サウンドトラックによる 武満徹 映画音楽

オリジナル・サウンドトラックによる 武満徹 映画音楽

2枚目は篠田正浩監督作品への音楽集。とにかく武満徹の音色感覚の鋭さ、繊細さに感嘆させられる音楽が詰まっています。


まずは「化石の森」ですが、音響派エレクトロニカの棚にあっても違和感のない、今聴いても新鮮な音楽に驚かされます。楽器編成はタブラ・バヤ、サーランギ、ダルシマークラリネット、パーカッション、電気ヴァイオリン、シンセサイザーなどといった特異なもの。パーカッションの使い方、電気音と生楽器のからませ方が巧みです。途中挿入されるジャズ・ピアノ(演奏は八木正夫)も印象的。
続く「沈黙」ではリュートと2台のハープのみでシンプルだけど広がりのある音楽を紡ぎだしています。「リング」などの室内楽にも通じる響き。穏やかなリュートの調べをハープが寸断して緊張感が生まれています。
「美しさと哀しみと」もフルート、ハープ、鈴、プリベアド・ピアノ、アフリカの民族楽器という特殊な編成。しかし奏でられる音楽は美しい。「暗殺」では尺八とプリベアド・ピアノという素材を電気的に変調して、緊迫感のある音響を生み出すのに成功しています。「異聞猿飛佐助」「はなれ瞽女おりん」「あかね雲」では比較的通常の楽器編成に近い感じになっており、いわゆる「映画音楽」らしい音楽を聴くことができます。しかし決して凡庸な音楽ではないことは付け加えておかなくては。さりげないジャズやラテンのリズムの導入、ストリングスによる叙情的なメロディー、繊細な色どりを添えるパーカッションなど聴きどこころはいくらでも見出すことができます。