「オリジナル・サウンドトラックによる 武満徹 映画音楽」〜小林正樹監督作品編〜

オリジナル・サウンドトラックによる 武満徹 映画音楽

オリジナル・サウンドトラックによる 武満徹 映画音楽

今日は武満徹の命日。早いもので亡くなってもう10年になるのですね。武満が大の映画好きであり、かつ多数の映画音楽をてがけていたのは有名ですが、その中から主要な作品を監督別にCD6枚にまとめたシリーズがBOX*1となって一気に再発されました。一気に聴くのはとてもじゃないけど無理なので、今日から一枚ずつ簡単にレヴューしていきたいと思います。


まず1枚目は小林正樹監督作品編。なんといっても27分に及ぶ「怪談」の音楽が圧倒的です。全編ミュージック・コンクレート。プリベアド・ピアノ、石、尺八、能楽師の声などを電気的に変調した素材で組み立てられた緊迫感のある音響群。その中で不意に平家琵琶の謡語りが現れる瞬間にゾクゾクさせられます。クセナキスが絶賛したのも納得。
続く「切腹」の音楽も力作。アルト・フルート、コントラバス、チェロを電気的に変調して用い、そこに琵琶が楔を打ち込んでいくドラマティックな作品です。


上の2作が力作かつ大曲なので続けて聴くとかなり疲れるのですが、幸いなことに残る「燃える秋」「からみ合い」「日本の青春」「化石」の音楽では武満のロマンティックな面を聴くことができます。「からみ合い」で聴かれるジャズ・サウンドを聴けば、かつてデューク・エリントンへの師事を希望したというエピソードを思い出さずにはいられません。
この1枚目、武満の先鋭的な面と叙情的な面を両方味わえるかなりお得なアルバムです。

*1:今回のBOXには特典盤が加わり全7枚となっています