CREATION REBEL「STARSHIP AFRICA」

エイドリアン・シャーウッド関連の作品を昨日話題にした「ブッシュ・オブ・ゴースツ」とのサウンドの類似性で捉えるならば、ダブ・サウンドに呪術的なチャントを融合させたアフリカン・ヘッド・チャージの方が良いのでしょうが、この作品を取り上げたのはレコーディングが1977年、翌年ミックスを開始し、発売が1980年と完全に制作時期が重なるから。エイドリアン・シャーウッドが自身のレーベルであるON-U Soundの前身である4D Rhythmsから発表したUKダブの名盤です。


クリエイション・レベルはギターのクルシャル・トニー、メロディカのドクター・パブロを中心にしてロンドンで産声をあげたバンド。1978年にデビュー・アルバム「Dub From Creation」を発表しています(エンジニアはデニス・ボーヴェル)。このデビュー・アルバムのリズムを録り直すことから「Starship Africa」の制作が始まりました。ここでエイドリアン・シャーウッドが施したことは、本人の言葉を引用すると―

サウンドは本当に素晴らしかったのだが、どうも演奏の間のとり方やタイミングがパーフェクトではなかった。これをクリアにするために、2インチのマルチ・トラック・テープを使い曲を逆回転させることにした。さらにリヴァーヴとディレイをランダムに加え、正規回転の再生用に1/4インチ・テープを用いた。

その結果、自信たっぷりに本人が語るように「今聴いても新鮮なサウンドが」生まれました。ほとんどのダブに共通することですが、太いベース・ラインの上をエフェクト処理された上ものが浮遊していくのを聴いていると1曲の中にスピードの異なる複数の時間が流れているように感じられて、そこが快くてたまりません。それに加えて、エイドリアン・シャーウッドが生み出した音像は、キング・タビーリー・ペリーといったジャマイカのダブ・マスター達の生み出したサウンドと比べると格段にクリアでメタリック。同時代のニュー・ウェイヴ〜テクノ・ポップとの親和性が高く、私にはジャマイカのダブよりとっつきやすいものでした(キング・タビーリー・ペリーに親しむのは私の場合時間がかかりました)。サウンド的にアフリカを感じさせる要素は少ないものの、あえて「アフリカ」の語をアルバム・タイトルに冠したところにエイドリアンのルーツ志向がうかがえるような気がしますね。アフリカへのアプローチを比較する視点から「ブッシュ・オブ・ゴースツ」と本作を聴き比べてみるのも一興かもしれません。