HAS「HAS HUMAN AUDIO SPONGE Live in Barcelona-Tokyo」

SKETCH SHOW細野晴臣+高橋幸宏)に坂本龍一が加わったユニットがHUMAN AUDIO SPONGE(以下HAS)。彼等は2004年に次世代ミュージックとマルチメディア・アートの国際フェスティバル<sonar>に参加してバルセロナと東京でライヴを行いました。このDVDにはその両公演の模様が収録されています。
HASはあくまでもSKETCH SHOW+αであるのでSKETCH SHOWの音楽性が基底になります。当時のSKETCH SHOWは2ndアルバム「LOOPHOLE」の制作中であり、ここで聴かれるのもその中からの曲が中心となったものです。水彩画のような淡い、繊細な電子音が重なるサウンドなのですが、他のエレクトロニカと大きく異なるのはリズム処理。シンコペーションを効かせたビートが曲に立体感を醸成しているのが、流石リズム隊を中心としたユニットだと思わせます。


ステージの模様ですが、派手なステージ・パフォーマンスはほとんどありません。背後のスクリーンにCGが映し出されていますが、クラフトワークのように具象的で曲とがっちりシンクロしているものではなく、抽象的なグラフィックであくまでイメージ演出のひとつといった位置づけ。あくまでも黙々とラップトップに向っている3人の姿が中心です。特にバルセロナ公演は地味。だけど観客は大興奮しているのが面白い。ただバルセロナ公演だけだと教授の存在意義が見えにくいですね。「ライオット・イン・ラゴス」でフェーダーをいじくってダブ的な効果を与えているのが目立つくらい。あれあれと思っていたらラストの「Seven Samurai」でピアノに向かいようやく本領発揮といったところ。


それに対してコーネリアスがギターで参加した東京公演は、中盤で幸宏がドラム・キットに移り、細野がベースを持つ、バンド形式の演奏を披露するので3人のプレイヤーとしての姿が楽しめます。もうYMOに囚われることなく今の自分達の音楽を丹念に奏でる姿が素晴らしい。とはいっても「ライオット・イン・ラゴス」で観客が一番盛り上がるのはしょうがないでしょうね。


特典として当時を振り返ったインタビューがついています。YMO時代の話もちょっと出てきたりするので昔からのファンにはうれしいところ。