湯川潮音「湯川潮音」

huraibou2006-02-04

待望のメジャーからのデビュー・アルバム。とはいえ過剰に着飾ることなく、鈴木惣一朗プロデュースの下、前作「逆上がりの国」の路線を一歩押し進めたものとなっております。アコースティック・サウンドによる細やかなアンサンブルが中心ですが、先行シングル「蝋燭を灯して」のようなジェームズ・イハによるロック調のサウンドもいいアクセントとなって溶け込んでいます。
鈴木惣一朗によると、レコーディングのときヴァシュティ・バニアンを聴かせたとのこと。なるほど本作に流れる密やかで内省的な雰囲気にはどことなくブリティッシュ・フォークに通じるところがあるような気がします。しかし私がこのアルバムの、特に前半を聴いて思い浮かべたのは金延幸子の名作「み空」です。言葉にするのは難しいのですが全体の質感や歌いまわしが似ているように感じたのですよ。これだけでも新鮮な気分で本作に耳を傾けるには十分でした。そして自作曲の出来がアルバムを重ねる毎に充実しているのが、以前から彼女の音楽に接してきたファンにはうれしい。児童合唱団を上手く使った「聖堂の隅で」と、ゆったりとしたメロディをペダル・スティールとフルートが柔らかく包み込む「海の上のパイロット」が特に印象的でした。じっくりと長くつきあえそうなアルバムです。