トニー・ウィリアムス・ライフタイム「エマージェンシー!」

エマージェンシー!

エマージェンシー!

60年代マイルス・デイヴィスのリズムの要として活躍したトニー・ウィリアムスが、マイルスから独立して結成したのがライフタイム。初期のメンバーはトニーの他にジョン・マクラフリン(g)、ラリー・ヤング(org)で、この編成による記念すべき1stアルバムがこの「エマージェンシー!」です。
3人が対等に絡み合い、丁々発止のインタープレイを全編に亘って展開しているのですが、サウンド・カラーを決定づけているのはラリー・ヤングのオルガンでしょう。ブルーノートから何枚かリーダー・アルバムを出しているラリー・ヤングですが、「オルガンのコルトレーン」の異名を持つ彼は、同じレーベルのジミー・スミスやベイビーフェイス・ウィレットといったオルガニストとは一線を画すワイルドな演奏が持ち味で、その個性がこのアルバムで全開しています。ヤングの濁りのある演奏が、録音状態の悪さも手伝って、カオティックな魅力をこのアルバムに与えているのです。
もちろん、トニーのドラミングやマクラフリンのギターも火花が飛び散るように熱く(まあ、時々入るトニーのヴォーカルはご愛敬)、これを聴いたマイルスが改めてトニーに自分のバンドに入るよう誘ったというのもうなづける話。流石に再加入こそしなかったものの、トニーもマクラフリンもマイルス「イン・ア・サイレント・ウェイ」に参加しています。しかしマイルスがすごいのは「エマージェンシー」での激しい演奏を聴いて誘ったくせに、「イン・ア・サイレント・ウェイ」ではトニーにひたすらストイックなシンバル・ワークだけさせているところですね。