トラフィック「ファー・フロム・ホーム」

Far From Home

Far From Home

なんだか無かった事にされてるような気がする、1994年に発表されたトラフィック20年ぶりの再結成盤。このころのスティーヴ・ウインウッドは80年代にヒット・チャートを賑わしていた勢いも下火になっていただけに、せっかくの再結成もあまり話題にならなかったまま終わってしまいました。発表当時既にクリス・ウッドは他界していたため、ジム・キャパルディとのデュオという形態だったことも、今ひとつ盛り上がらなかった一因かもしれません。
しかし、これは伊達にトラフィック名義で発表されたわけではありません。キャッチーさは薄いものの聴き応えのある楽曲が並んでいます。さながらかつての傑作「ジョン・バーレイコーン・マスト・ダイ」を新しいテクノロジーでつくりなおしてみた、といった趣。5曲目のユーリアン・パイプを大胆にフィーチュアした、トラッド色の濃い曲を聴いているとどうしてもそう思えてならないのです。ウインウッドのオルガンは相変わらずいい味出しているし、キャパルディのドラムもこの人ならではのリズム感覚を存分に発揮しています。
ただ、だからこそ聴き進むにつれてクリス・ウッドが不在なのが残念になってくるのも確か。ウインウッドがキーボードで時々フルートっぽい音色によるオブリガードを重ねているのは、当の本人達もそのことを実感していたからではないでしょうか。
今年になってジム・キャパルディも亡くなってしまい、もうトラフィックが再編されることはないと思います。まさしく「Far from Home」。だからこそ、改めてこのアルバムにじっくりと耳を傾けたいですね。