リック・ダンコ「リック・ダンコ」

リック・ダンコ

リック・ダンコ

ザ・バンドのメンバーの中では昔からリック・ダンコが好きでした。ベース・プレイはもちろん、リチャード・マニュエルとレヴォン・ヘルムのちょうど中間に位置するような味わいのあるヴォーカルにも惹かれていたのです。ビートニクスがカヴァーした「ステージ・フライト」やザ・バンド後期の代表作『南十字星』に収録されている「同じことさ!」はリックがリード・ヴォーカルをとっている曲ですが、どちらも数多いザ・バンドの名曲の中でも私にとって忘れがたい印象を残しています。特に「同じことさ!」は絶唱と呼ぶにふさわしい出来栄えといってもいいのではないでしょうか。

そんなリックの声がたっぷりと味わえるこのアルバムは77年発表。ソロ第1作となる作品です。多彩なゲストが参加しており、リード・ギターだけでもロン・ウッド、ブロンディ・チャップリンエリック・クラプトン、ダグ・サーム、ロビー・ロバートソン、マイケル・デ・テンプル、ジム・アトキンソンといった顔ぶれがそろっています。他にもザ・バンド仲間のレヴォン・ヘルム、ガース・ハドソンに加え、ホーン・セクションも導入。これだけのメンバーをそろえながらもサウンドは決して派手なものではなく、泥くささとポップさが程よくブレンドされたものになっているのがこのアルバムの一番の魅力。リックも楽しそうに伸びやかに歌っています。曲も粒揃いでロビー・ロバートソンの、いかにも「らしい」ギターが聴ける「ジャワ・ブルース」やボビー・チャールズの名曲「スモール・タウン・トーク」などが特に聴きものといえるでしょう。