ポール・マッカートニー「ケイオス&クリエイション・イン・ザ・バックヤード」

Chaos And Creation In The Back Yard (CCCD)
巷の評判がかなり高い今回の新作。ただ、職場のロック好きの後輩は「あまりピンとこなかった」と肩を落としていたので、期待と不安が半々の状態で耳を傾けました。
・・・・で、最初の印象はあまり良いものではなかったんですね。これまでにないちょっとストレンジな響きがするイントロやアレンジの端々に耳を奪われたものの、肝心の楽曲の印象が希薄で、ポールらしいキャッチーさが感じられず「うーん」と言葉をなくしてしまいました。ただし、前作「ドライヴィング・レイン」は数回聴いても「うーん」のまま終わってしまい、今では埃をかぶっているのに対して、このアルバムには、「もっとじっくり聴けば良さがわかるかも」と感じさせる何かがあったのです。
・・・・で、何度が繰り返して聴いた今は、かなり感じが良くなりました。いくらナイジェル・ゴドリッチがプロデュースしたとはいえ、ほぼポール自身による多重録音でつくられたこの作品は、やっぱり「マッカートニーⅢ」なんですね。SSW的なパーソナルな味わいがあります。とびぬけた楽曲がない、という感想は変わらないのですが、例えば『バンド・オン・ザ・ラン』収録の「ノー・ワーズ」や『タッグ・オブ・ウォー』収録「サムバディ・フー・ケアーズ?」のような、目立たぬながらもアルバムのクオリティを支えているような曲がずらりとならんだ、という印象です。まるでドノヴァンのような「イングリッシュ・ティー」などいい味出してますね。代表作というにはためらいを感じるけれど、久々にずっと聴き続けていられそうなアルバムです。