オパビニア「オパビニア」(asin:B0009G3I8G)

huraibou2005-09-29

元キリング・タイムのキーボード、清水一登鬼怒無月芳垣安洋と結成したトリオのデビューアルバム。2003年作。


今年のミュージック・マガジン誌6月号の連載「めかくしプレイ」は清水がゲストだったのですが、エルメート・パスコアール、ZNR、ヴェーベルンといったひとくせもふたくせもある音楽を、イントロ1秒から2秒のうちに次々と答えていき、読んでいて感心しっぱなしでした。特にヴェーベルンをイントロ2秒で「これは作品10番代・・・・16かな?」(実際は17番)とほぼ正解したくだりは、その知識の豊富さと反射神経に圧倒されましたね。同じ記事には、このユニットの狙いを清水が語っており、一部引用すると「ベースレスのトリオでワーッとやりたい(中略)僕のキーボードによる即興的なコードとベース・ラインの上でギターとドラムに暴れてもらうというコンセプトです」とのこと。


そんなコンセプトの下繰り広げられる音楽は、時にフリーなインタープレイを展開したり、19拍子という複雑なリズムの曲をやったり、ふとカンタベリー的な印象を与えたり(2002年に来日したリチャード・シンクレアのバックバンドを務めている)、清水の奏でるバスクラエリック・ドルフィーを思わせたりするときもある、千変万化な表情を見せます。即興による奔放さと緻密な構成が表裏一体となっていて形容するのが困難。なにしろ、曲名からして「情熱の通り雨」「ふぐ汁(昨夜の」「ヒョーロク玉」といった具合なので、なかなか尻尾をつかませてはくれません。けれども聴いていて心地よいんだなあ、これが。傑作と思います。


ちなみにバンド名は、先カンブリア時代に北アメリカの海で生息していた節足動物からとられたもの。体長約7cm。顔の先端に長い腕のようなものをつけ、目が5つあったという、摩訶不思議な生物です。イメージがまったく思い浮かばない方はこちらをご覧ください。