スティーヴィー・ワンダー「ファースト・フィナーレ」

ファースト・フィナーレ

ファースト・フィナーレ

不慮の交通事故から復帰してリリースされた74年作。前作「インナーヴィジョンズ」では社会情勢にもコミットした歌詞や、緊張感のあるサウンドづくりが目立っていましたが、このアルバムではジャクソン5が参加した「悪夢」など数曲を除けば穏やかな曲が中心となっています。しかし、収録曲はどれも美しいメロディーを持ち、スティーヴィーの歌唱は気高さをも感じさせる充実した内容。音楽への喜びが脈打っているのをどの曲からも感じることが出来るのです。レゲエを取り入れた「ブギ・オン・レゲエ・ウーマン」、サンバに挑んだ「美の鳥」どちらもかなり“オレ流”の解釈なのですが、あまり気にならないのは、既にスティーヴィーそのものが一つのジャンルになっているからでしょうか。“ジャンルとしてのスティーヴィー・ワンダー”は続く大作「キー・オブ・ライフ」で完全に確立します。