トム・ニューマン「妖精交響曲」

妖精交響曲

妖精交響曲

ジャケットを眺めているだけでも期待が膨らむ(しかもリヴァーシブル)、77年発表の2ndアルバム。60年代からジェイド・ウォーリアーなどのバンドで活動していたトム・ニューマンですが、彼の名声が高まったのは70年代になって、エンジニアとしても活動を始めてから。マイク・オールドフィールドの世界的なベストセラーとなったデビュー・アルバム「チューブラー・ベルズ」でエンジニアを務めていたのが彼だったのです。
今回取り上げた「妖精交響曲」は「チューブラー・ベルズ」をきっかけに彼を知った人の期待を裏切らない仕上がり。あえて比べると「チューブラー・ベルズ」からミニマル・ミュージックの要素を抜いて、アコースティックな要素を強めたような音楽になっています。聴きはじめたとたんに、バラライカグロッケンシュピールの繊細な響きの中から静かに立ち現れてくる、フルートやオーボエのメロディーに誘われてケルトの深い森の世界に導かれます。後はこの穏やかで彩りあふれる世界を周遊するのみ。終盤ちょっと盛り上がるけど、最後は再び牧歌的なメロトロンによるフルートのメロディーで幕を閉じます。甘すぎない、良質なファンタジーに浸ることのできる名作。