レオホルト・ウラッハ/ウィーン・コンツェルトハウス四重奏団「モーツァルト&ブラームス:クラリネット五重奏曲」

モーツァルト:クラリネット五重奏曲

モーツァルト:クラリネット五重奏曲

このアルバムが歴史的名盤ということは前から知っていました。けれども50年代のモノラル録音という、ただそれだけの理由で敬遠してしまい、今年になってようやく耳にしたのです。なんとも無駄な遠回りをしたものです。

クラシック好きの方には言わずもがなの説明になりますが、このアルバムでクラリネットを奏でるウラッハも、ウィーン・コンツェルトハウス四重奏団も当時のウィーン・フィルの一員でした。彼等のアンサンブルからはウィーンフィル特有の柔らかさ、温かさ、繊細な色彩感が感じられます。特にウラッハのまろやかな音色の美しさは筆舌に尽くしがたい。それをしっかりと記録したウェストミンスター・レーベルの音の良さも特筆すべきでしょう。

曲にも少し触れておくと、ブラームスも勿論名曲なのですが、モーツァルトがやはり素晴らしい。あまりモーツァルトに思い入れのあるほうではないし、最近のまるで健康食品かセラピー用のグッズのように彼の曲が宣伝されている光景を見ると正直うんざりするけれど、この曲を聴くとそんなことはどうでもよくなります。晩秋の日差しのようなやわらかい明るさとかすかな憂いを持つ調べが周囲を静かに包み込んでいくのをただ味わうのみですね。