セロニアス・モンク「ブリリアント・コーナーズ」

ブリリアント・コーナーズ

ブリリアント・コーナーズ

セロニアス・モンクを代表する名盤の誉れ高い作品。共演にソニー・ロリンズマックス・ローチといった、モンクの風変わりな曲でもたっぷりと歌うことのできるメンバーを揃えたのがこのアルバムを親しみやすいものにしています。アルト・サックスのアーニー・ヘンリーはどちらかというとマイナーな人ですが、タイトル曲でのアグレッシヴなソロは当時非常に評判になったそうです。

このアルバムではモンクの様々な魅力がわかりやすく提示されています。
まず最初にコンポーザーとしてのモンク。タイトル・チューン「ブリリアント・コーナーズ」や「ベムシャ・スイング」でその不思議に耳に残るメロディーを聴くことができます。ちょっとグロテスクで、そのくせ妙にユーモラスでもあるのが面白いところ。
次にサウンド・クリエイターとしてのモンク。「ベムシャ・スイング」でティンパニマックス・ローチが叩いているのもユニークですが、なんといっても「パノニカ」でしょう。ここではモンク自身が右手でチェレスタ、左手でピアノを弾いているのですが、これが絶妙にリリカルな雰囲気を醸し出しているんですね。このアルバムで私が最も好きな曲です。
そしてピアニストのモンク。全編にわたって独特の「間」と不協和音を生かした演奏を聴かせてくれるのですが、このアルバムで唯一のソロ・ピアノによるスタンダード「アイ・サレンダー・ディア」でその魅力がじっくりと味わえます。モンク特有の下から上へ駆け上がっていくフレーズをちりばめた演奏。最初のうちはニュアンスもなにもなく、ただぶっきらぼうに弾いているようにしか聴こえないのに、だんだん底に脈打つ歌心に気づかされ、最後には感動してしまいます。

名盤の多い人ですが、どれか1枚といえばやっぱりこれですね。一度好きになるとなかなか抜けだせない魅力がこの人の音楽にはあります。より深くその世界を味わいたい人はソロ・アルバム「セロニアス・ヒムセルフ」を推薦しておきましょう。