バロック・ジャズ・トリオ「BJT」

BJT

BJT

1970年作。グループ名が「バロック・ジャズ・トリオ」で編成がハープシコード、チェロにパーカッションと来たら、なんだ、まんまじゃないかと思いたくなります。いわゆる「クラシカル」なジャズというやつですね。MJQ(大好きなグループなんですけどね)やらジャック・ルーシェといった名前を思い浮かべ、あんな感じかねとつぶやきたくもなるというもの。ましてやCD化に際してヘンデルの「ラルゴ」をアレンジした曲がボーナス・トラックに加わったというので、ますます期待はもてそうにありませんでした。あの「サラヴァ」レーベルから出ていたのでなければ・・・。これがヴァーブやプレスティッジから出ていたなら、きっと私が手に取ることはなかったと思います。

ところがプレーヤーにCDをセットして、しばらくして流れてきた音は予想を完全に覆す怪しげなサウンドでした。1曲目「Dehli Daily」のハープシーコードはまるでシタールのように響き、エスニックなフレーズを繰り出してきます。そこに絡む打楽器はなんとタブラ。続いて入ってくるチェロはやや痩せた響きなので、これまたクラシカルには聴こえません。国籍不明のサウンドの中で、3人が激しくインタープレイを交わしていくこの曲で、もう一気に引き込まれました。続く、2、3曲目は実験的なミステリアスな曲。そして4曲目「Latin Baroque」と5曲目「Zoma」がこのアルバム最大の聴きどころ。前者はタイトル通りラテン・ビートで疾走するグルーヴィーなナンバー。後者は11分の大作。フルートの尺八っぽいフレーズで始まり、ヒップ・ホップっぽいビートに乗せてハープシコードとフルートがインタープレイを繰り広げます。一旦ビートが消えてチェロ・ソロとなり、再びビートが復活して終盤へなだれ込むという展開がスリリングです。そしてオリジナル・アルバムではラストにあたる曲はややブルージーでポップな感触すらあり、最後まで一筋縄ではいきません。全体的にややもすればキワモノになりかねないアプローチを、グルーヴィーなビートと緊張感のあるインタープレイでしっかり聴かせる内容にしているところが素晴らしい。この次の展開というのは確かに見えづらいので、これ1枚で終わってしまったのも仕方のないことでしょうが、単なる珍品の枠には留まらない優れたジャズだと思います。