ジュディ・シル「ドリームズ・カム・トゥルー」

Dreams Come True

Dreams Come True

79年、早すぎる死の直前に録音されていた音源をまとめた、まさに幻のアルバムの発売。2枚組で1枚目にはスタジオ録音の8曲とデモ音源を、2枚目にはレア・トラックを収録し、さらにライヴ映像も収められています。丁寧なアートワーク、充実したブックレットに加えジム・オルークがミックスを手がけるなど、スタッフが彼女に敬意を持って発売に臨んだことが伝わる仕上がりとなっています。
内容も1stや2ndに劣らない素晴らしいもので、ピアノ、ギター、ベース、ドラムスといった編成にコーラスが加わるだけのシンプルなサウンドながら、それによってかえって曲の良さがはっきりと伝わり、ジュディの声も衰えていません。リラックスした雰囲気も感じられるのがいいですね。歌詞も味わい深いものばかりです。彼女の悲劇的な生涯を知っている人には、

私はずっと倒れたままだったけど
こうしてまた立ち上がることができた
「アイム・オーヴァー」より

と歌われるのを聴くのは少々辛いかもしれませんが・・・。


付属のブックレットは本人および関係者の証言を多数収録した読み応えのある内容(国内盤は完訳が付いているのでありがたいです)。これも読んでいると胸が痛みます。もちろんジュディ・シルの音楽の魅力は彼女の生涯のことを知らない人にも充分伝わると思うので、あまり聴くときに拘泥する必要はないのでしょうが、なかなかそういうわけにもいかないもの。
うれしかったのはライヴ映像。モノクロ(というよりセピア色)でお世辞にも良い画質とはいえないのですが、自然体でギターやピアノの弾き語りを披露する姿に魅入ってしまいました。