メリー・ホプキン「ベスト・オブ・メリー・ホプキン」

ベスト・オブ・メリー・ホプキン
ポール・マッカートニーのプロダクションから離れたメリー・ホプキンが選んだプロデューサーは、ミッキー・モスト。ジェフ・ベック・グループやヤードバーズなどのプロデューサーとして名高い人です。この組み合わせは一見意外なようですが、当時のドノヴァンも彼が手がけていたのでそのつながりかも知れません。今回取り上げたこのベスト・アルバムにはその時期のシングル「夢見る港」や「しあわせの扉」「未来の子供たちのために」が収録されています。優れているのはポップなカリプソ・タッチの「夢見る港」。オリジナルはフィルモアリンカーンで彼の唯一のアルバムに収録されています。


しかし、このベスト・アルバムの本当の聴きどころは8曲目から11曲目に続けて収録された、ギャラガー&ライル作品につきます。これらの曲はカントリー調のポップな「ジェファーソン」を除けば、いずれも当時のシングルのB面曲なのですが、メランコリックなメロディーをもつ美しい佳品ぞろい。「グッドバイ」のB面だった「スパロー」、「未来の子供たちのために」のB面「ヘリテッジ」はポップさこそA面に比べて欠けるものの、曲の出来はA面をしのいでいるといってもいいでしょう。お蔵入りしたシングル「ケ・セラ・セラ」(これもこのベスト盤に収録)のB面予定だった「ザ・フィールド・オブ・セント・エティエンヌ」はメリー自身もお気に入りでした。


ミッキー・モストとは結局アルバムを制作することがなく関係が終わってしまいます。メリーは数ヶ月音楽活動を休止するのですが、活動再開後ようやく彼女の資質を生かすことができるプロデューサーに巡り会いました。その名はトニー・ヴィスコンティ。後に夫となる彼の協力を得て、いよいよメリーは自分のやりたかった音楽に取り組みはじめます。その素晴らしい成果については次の機会に。