メリー・ホプキン「大地の歌」

Earth Song Ocean Song
メリー・ホプキンは自分で歌をつくることはしないので、誰がプロデュースするかがとても重要になってきます。ポール・マッカートニーの「歌のお姉さん」路線、ミッキー・モストの「目指せ、音楽祭入賞」路線のいずれもメリーがやりたかった音楽とは異なったものでした。そんな彼女がようやく巡り会ったのがトニー・ヴィスコンティ。彼の助力によってメリー・ホプキンは本当に自分のやりたかったフォーク・ミュージックをアルバムに残すことができました。それが「大地の歌」です。
ギターとメリーの声、それに寄り添うような薄いストリングスが基本のシンプル・サウンドで1曲1曲を丁寧に歌い綴る、静かな美しさに満ちた音楽です。マッギネス・フリントのアルバムに収録されていたギャラガー&ライル作「インターナショナル」でアルバムは幕を開けます。物悲しい旋律を抑制して歌うメリーの歌唱もさることながら、一旦休止した後ひそやかに流れてくる間奏のストリングスが絶品。聴くたびにため息が出てしまいます。この調子で全曲じっくりと聴かせますが、ラルフ・マクテル作品の2曲が親しみやすいメロディで特に耳に残ります。発売当時はチャート・インすらしなかった地味な作品ですが、メリー・ホプキンのファンのみならず、ブリティッシュ・フォークのファンにもぜひ耳にしてもらいたい、味わい深い名盤といえるでしょう。