これ「
千のナイフ」と「B−2UNIT」の間に発表されたアルバムだったんですね。振り幅が大きいなあ。正直、あまり聴いてきたとはいえない作品だったのですが、再発を機に久しぶりに接してみたら割と楽しめました。ユキヒロ、
小原礼、
鈴木茂、
大村憲司、
渡辺香津美(アブドゥーラ・ザ・“ブッシャー”名義)、
矢野顕子etcといった豪華なメンバーを揃えてのレゲエで
フュージョンな
サウンド。いい意味でのお気楽感があって爽やかですらあります。とはいえ「夏の
神経症」というタイトルがついているくらいですから、能天気に弾けている、ということもないんですね。坂本本人がヴォーカルを取る曲が多いのですが、
ヴォコーダーを使いまくっているので、そこだけテクノっぽくて密室的な雰囲気。親しい友人達と海へ遊びに来たのはいいけれど、自分だけ海の家から一歩も出ないで声援だけしているような感じです。例えば6曲目「タイム・トリップ」。
安井かずみが提供した歌詞ですら
ヴォコーダーでよく聞き取れないようにしておいて、
ハモンド・オルガンや
フェンダー・ローズの音色は心地よく響かせているヒネクレ・ポップなのですが、このヒネクレ具合がジャケットの「無理して明るく笑っている」感に象徴されているような。いくら歯を見せて笑っていてもコルセットしてるわけだしね。でもそこが本作の面白いところ。
もっともヴォーカルの入っていない最後の2曲も普通に気持ちよく聴くことができて、特にラストの細野提供曲「ニューロニアン・ネットワーク」はラウンジ・ブームを先取りしたともいえる快適な音楽になっています。