高橋幸宏「What Me Worry?」

What,Me Worry?

What,Me Worry?

あの頃は 毎日が 夢のようで
いつでも 甘い香り あふれてた

(「回想」より 作詞:高橋幸宏

今回復刻された高橋幸宏のソロ作品は、どれも傑作と呼ぶのにふさわしいアルバムばかりなのですが、もし幸宏を初めて聴くという人に何を勧めるかと尋ねられたら、このアルバムを選びます。「サラヴァ!」のエレガントさ、「音楽殺人」の弾けっぷり、「ニウロマンティック」の美意識、これら全てが昇華されてこの「What Me Worry?」にパッケージされているからです。さらに日本語詞の抒情的な曲や、ビートルズのカヴァーといった後年の作品を予感させる要素も既にここで登場しています。昔から特に好きだったのが歌詞を引用した坂本龍一曲の「回想」。「中華三昧」CM曲を発展させたものですが、アジアンっぽいメロディをレゲエ・ビートで処理し、ロマンティックな歌詞をつけるというアイディアが光る名曲です。幸宏がYMOの中でもポップな側面を代表していた、ということは自他ともに認めるところですが、このアルバムのサウンドが普通にポップなのかといえばもちろんそんなことはなくて、音色に対する感覚、ノイズの取り込み方などYMOの他の2人に勝るとも劣りません。アルバム冒頭のイミュレーターによるコーラスは昨日取り上げた細野作品「フィルハーモニー」を彷彿とさせますし、今回ライナーとして収録されているインタビューを読んでプリベアード・ピアノを弾いてる曲(「ディス・ストレンジ・オブセッション」)まであることを知って驚きましたが、それを洗練されたポップ・ミュージックとして提示しているのがたまらなくカッコイイんですよね。一家に一枚の名盤ですよ。


★このアルバムについてショック太郎さんが魅力的なレビューを書いているので、そちらもぜひご覧ください。幸宏の他のアルバムも日記で取り上げられていますよ。
http://d.hatena.ne.jp/bluemarble/20050311