クラムボン「てん 、」

「てん、」

「てん、」

今日は一日中このアルバムを繰り返して聴いていました。クラムボンの新作は初期のキャッチーさこそやや影を潜めていますが、不思議と聴き飽きない作品になっています。じわじわと惹きこまれていきますね。サウンド的には3人を中心としたシンプルなものなのですが、エコーを抑え目にした楽器の響きの質感が心地よい。これが単純なナチュラル志向ではなく、ここ数作続いた音響的なアプローチの成果を踏まえてのものというのは、彼らの軌跡を追ってきたファンにはごく自然に理解できることではないかと思います。裏をかえせばこのアルバムで初めてクラムボンに接した、という人にはこのサウンドは地味に聴こえてしまうのでは、と懸念もありますね。楽曲も初期にあった分かりやすいキャッチーさはほぼ影を潜めていますし。
けれども3人の演奏の一体感をこれまで以上に感じられるのがこのアルバムの最大の魅力で、それは影を潜めたキャッチーさを充分に補って余りあるものと私には思えます。その意味で今作を音が固まりになって聴こえる、モノラル・ミックスで出そうとしたミトの意図は理解できるものですが、いくら益子樹が手がけたとはいえ、ステレオ・ミックスとあわせて3,700円という価格で出すというのにはちょっと疑問があります。当初アナウンスされていたダブ・ミックスがカップリングについていたならば、そのエコー感などが本編と好対照をなしたと思うのですが・・・。