RIKKI「結ぬ島へ-リッキの奄美島唄-」

結ぬ島へ-リッキの奄美島唄-

結ぬ島へ-リッキの奄美島唄-

奄美民謡の歌い手から、いちはやくポップ・フィールドへ飛び出したRIKKI。私は本名で活動していた時代から聴いていました。そのころは声には惹かれていたのですが、いわゆるワールド・ミュージック的なプロダクションが彼女の良さを殺しているように思えました。特に久保田真琴が手がけたアルバムは完全にオーバー・プロデュースで、月並みな例えですが籠の中の鳥のような窮屈な印象がありましたねえ。
一旦ブランクを置いた後「RIKKI」名義で活動をはじめてからは、彼女の持つ繊細さを損なわないような音づくりがなされ、一作ごとにクオリティが上がっていきました。もともと歌唱力には非のうちどころがないのですから、こうなるとこちらも安心して耳を傾けることができます。前作のポップ・アルバム「蜜」と島唄アルバム「シマウタTRICKLES」では今堀恒雄フェビアン・レザ・パネマルコス・スザーノを迎えた意欲的な音づくりに取り組み、成功をおさめました。
そうした活動を踏まえ登場した待望の新作は、島唄と彼女のオリジナル曲の両方を収めたもの。自作曲も奄美の伝統に連なるものである、との気持ちがタイトルに出ているといえるでしょう。今の空気を孕んだ島唄を歌うという彼女の意欲が伝わってくる作品ですが、音の感触はあくまで柔らかく、心地よい。コーラス・アレンジは台湾のアミ族のコーラスを思わせる響きを取り入れたりと、控えめながら新しい試みも忘れてはいません。そして、なんといっても伸びやかに舞うRIKKIのヴォーカルが素晴らしい。ファルセットを多用する歌い方と甘い声質は「コブシがまわる太田裕美」のようで、実に私好みなんです。これからも息長く活動して欲しい歌い手です。