高浪敬太郎「So So」(asin:B00005ELUE)

SO SO

93年、ピチカート・ファイヴ在籍時に発表された1stアルバム。歴代ピチカートのメンバーで最も上質のソングライターは彼だったと考えている私のような者にとっては、まさに待望のソロ・アルバムでした。アレンジに細海魚を起用。落ち着いた感触でありながら、ピチカートのファンの期待も裏切らないお洒落な感覚も巧みに織り込んだ見事な仕事でこのアルバムを長く聴くに耐えるものにしています。作詞は複数の作家を起用していますが、目玉は鈴木慶一が提供した「愛の壊し方」でしょう。このころの慶一の特色が良く表れている歌詞です。


きたない言葉 50もならべて
やさしい言葉 100も言われて

こんな時 涙 流したら
君との愛は 壊せないよ
(「愛の壊し方」より)


このように高浪本人は歌と作曲に専念しているのがアルバムの大きな特色ですが、そのことがピチカートとの違いを出すのに功を奏していると思います。決して上手いとはいえないヴォーカルもソフトな声質で耳に優しい。ピチカートのアルバム「スイート・ピチカート・ファイヴ」に収録されていた佳曲「コズミック・ブルース」のセルフ・カヴァーもオリジナルに比べてパーソナルな雰囲気となって違和感なくアルバムに溶け込んでいます。本当に良いメロディ・メイカーだと思いますね。彼が脱退した後のピチカート・ファイヴはどうしても曲の魅力が減少していったように感じられてなりません。それだけに最近は裏方仕事ばかりやっているような彼の活動は物足りない。ソロ・アルバムが3枚だけなんて少なすぎます。そろそろ上質のメロディにあふれた新しいポップ・ソング集を聴いてみたいのです。