エルヴィス・プレスリー「毎日がクリスマスなら」

毎日がクリスマスなら

毎日がクリスマスなら

57年と71年のアルバムからのセレクションに、66年のシングルを加えたコンピレーション盤。押さえ目に歌ってもプレスリーの声からは“ワルのにおい”〜でも、根はいい奴だということも伝わってくる〜がします。ちょっとしたフェイクや節回しがなんともいえず官能的なのです。太くて甘い低音の声質には、シナトラやペリー・コモなどの系譜を受け継いでいる要素も感じるのですが、彼等にはなかったエロスがプレスリーには刻印されている。それが私がプレスリーを聴くときにいつも感じる感覚、伴奏は古く感じるのに、声が異様に生々しく響くところからくる、いわば遠近感が失調した感覚をもたらす要因になっているように思えるのです。ロックン・ロールを歌わなくてもプレスリーの歌には危険な香りがあふれているのでありました。