V.A「オール・アバウト・クリスマス」

残念ながら画像がないのですが、中村とうようによるクリスマス・ソングのアンソロジーです。選曲、解説のみならず、ジャケットのデザインも中村とうよう自身が手がけており、この企画に対する力の入れようを感じさせます。
しかし、ちょっとまて(丸谷才一風)。中村とうようといえば大のキリスト教嫌いで通っている人物ではなかったでしょうか。それがなんでこんなアンソロジーを組むのか、といった少しでも中村とうようを知る者なら当然頭に浮かぶ疑問について、ライナーノートで本人自身が語っております。

キリストが生まれたのは中近東の砂漠地帯なのに、北方の植物であるモミの木をクリシマスツリーと称して飾る。これはお正月の門松と同じく、高く立つ木に生命が宿るというアジアの民俗学的思考から出たものに違いない。サンタ・クロース小アジア(いまのトルコ)の人だというが、北方の動物トナカイを従え、厚いマントを着るようになった。どう見てもクリスマスには東と西、南と北が混ざり合っている。キリストの誕生日に非キリスト教徒の日本人がドンチャン騒ぎするのはオカシイ!なんて目くじら立てるやつの方が、なんにもわかってないのだ。

これは後の段で本人も認めているように完全に開き直りなんですが、強引な理屈をこじつけてもアンソロジーを組みたくなる魅力がクリスマス・ソングにはあるということでしょう。ここはあまり突っ込まずに、一人のポップスの聴き巧者が編んだ世界のクリスマス・ソングを素直に楽しむのが得策っていうものです。可憐なドリス・デイの歌声から始まって、パティ・ペイジのブギ・ウギやポルカで楽しいアンドルーズ・シスターズ、珍品南アフリカクリスマス・ソングを歌うダーク・シティ・シスターズなど、多彩な選曲を流れ良く聴かせ、最後はダイナ・ワシントンの「きよしこの夜」でしっとりと締めるところは流石です。リマスターで再発希望!