坂本龍一+ダンスリー「ジ・エンド・オブ・エイジア」

huraibou2004-11-20

82年発表。最近リリースされた「Chronological Collection 1978-1981 [Columbia Years]」でリマスター音源が聴けます。こういう作品を聴くと80年代の教授は才能があったんだと、改めて思わされますね。ヨーロッパ中世の音楽と坂本のオリジナルが交互に収録されたコラボレーションで、私の中世音楽入門となった1枚です。
プロデュースは坂本、演奏はダンスリーによるもので、坂本は楽曲提供の他に一部の曲でパーカッションとポルタティフ・オルガンを演奏しています。坂本が提供した曲はアルバム・タイトルとなった「ジ・エンド・オブ・エイジア」をはじめ「ぼくのかけら」や「グラスホッパー」がかつてのレパートリー。加えて、「ダンス」「リヴァー」の2曲が新曲です。この新曲がダンスリーの楽器編成を意識して書かれたと思われる典雅な小品で、中世の楽曲と比べても違和感が少なく、アルバムの冒頭と最後に配されてまとまりをつけています。とはいえ、このような音楽的コンセプトの作品にあえて「ジ・エンド・オブ・エイジア」とつけた意図を読み取るには、その他の楽曲と中世の曲との響きの共鳴する部分と異質な部分に耳を澄ます必要があるでしょう。近代以降の西欧とも、アジアとも一歩距離を置いたところで成り立っている音楽がここでは提示されているのです。いわばこのアルバムは坂本龍一にとっての「さよならアメリカ、さよならニッポン」なのではないでしょうか。クールな批評眼が作品全体を覆っているのです。今回発売された「Chronological Collection 」に付されたライナーノートは、この作品について触れた部分で、癒し系の音楽をすでにアプローチしていたと、驚いているのですが、これは見当はずれもいいところ。当時の坂本もダンスリーもそんなヘンな狙いを持って音楽に向き合ってはいませんでしたし、実際の音もいわゆるそういったたぐいの音楽からは遠い響きになっています。