カン「フューチャー・デイズ」

Future Days

Future Days

73年発表。人力アンビエント・テクノの傑作です。淡々と細かなパルスを刻み続けるドラムス。ベースはオクターブを行ったり来たりでギターと摩訶不思議なコンビネーションを見せ、キーボードは雲のように漂う。ダモ鈴木のヴォーカルもここでは主役にはならず、サウンドのひとつの要素として、コラージュのようにちりばめられていきます。エンジニアリングを担当したのはメンバーのホルガー・シューカイ。このアルバムの軽やかでありながら、どこかクールな質感は彼によるところが大きいと思われます。全ての音がサウンドエフェクト的な感覚で処理され、ビートの波間を浮かんでは消え、また浮かんでは消えていくさまは限りなくダブに接近しているといえるのではないでしょうか。反復を基調としながらも、マニュエル・ゲッチングのようにトランシーに上り詰めるのではなく、どこか醒めた感覚が残っているのがカンの特色。しかし醒めているつもりが、ふと我にかえると深海の底に引きずりこまれたようにはまり込んでいる。これはかなり危険な快感を持つアルバムです。