V.A「宇野誠一郎作品集Ⅱ」「みんなでうたおう!ミスター・アンデルセン」

宇野誠一郎 作品集 II

宇野誠一郎 作品集 II

みんなでうたおう ! ミスター・アンデルセン + 20

みんなでうたおう ! ミスター・アンデルセン + 20

待望の宇野誠一郎作品集第2弾と、番外編の登場です。「作品集Ⅱ」は「ひょっこりひょうたん島」「ムーミン」など有名曲に加えて、高石ともやへの提供曲など比較的マイナーな曲も幅広く選曲。懐かしさだけに止まらない、新鮮な驚きと楽しさにあふれているのは前集と変わりありません。「ミスター・アンデルセン」は全52話の収録曲に加えて劇場版からの曲も加えた豪華盤です。私の記憶では♪ズッコズッコズッコズッコ、ズッコズッコズ、の「ズッコのうた」が強烈に印象づけられていましたが、残りの曲もかなり実験的なサウンドづくりで、これまた驚かされます。
今回のシリーズには宇野へのインタビューが掲載されていて、これがたいへん読み応えのあるものとなっています。広く人口に膾炙した曲でも意を満たしていない曲には容赦なく自己批判を加える、倫理的な姿勢には頭が下がりますね。あの有名な「アイアイ」でもテクニックだけで作ったとして、「論理的に作ったことに対する後悔の気持ちしかないです」だからねえ。奇想天外なアレンジやメロディーも、勝手につくったわけではなく、原作や歌詞と対峙した批評的営為としてあることが、彼の作品に改めて評価が高まっている一因なのではないでしょうか。
最後に宇野自身の言葉を引用。

世間には昔から「努力すればなんとかなる」とか「頑張れば成功する」といった世俗的思い込みがありますが、現在はそれを信用している人ってあまりいないと思うんです。だって、努力して成功する人っていうのは数千人に2、3人で、実際はうまくいかない人の方が多いじゃないですか。なのに失敗のことは取り上げず、成功した例だけ必要以上に紹介するものだから、なかにはそれを信じて飛び込んでしまって大失敗をする人がいるわけです。いい加減な心地好い言葉を語って、心地好い音楽を聴かせて、それで癒されたと考える人はあまりいないと思うんですよ。それに対してここに収められた音楽に含まれているのは一種の毒薬ですよ。美しそうな曲も含まれていますが、それを毒薬として飲むか、無意味な薬から何かを嗅ぎ取るか、そのあたりを楽しんで欲しいですね。