オレゴン「遥かなる丘」(ASIN:B0002FQLSS)

オレゴン

ヴァンガード時代の作品が続々と紙ジャケで再発されているオレゴン。1973年発表の作品です。
オレゴンは1970年に、ポール・ウィンターのグループ「ウィンター・コンソート」から、ラルフ・タウナー (ギター、ピアノetc.)、コリン・ウォルコット (タブラ、シタール etc.)、グレン・ムーア(ベース)、ポール・マキャンドレス(イングリッシュ・ホルンオーボエ、サックスetc.)の4名が独立して出来たユニット。ヴァンガードエレクトラ〜ECMといったレーベルを渡り歩き、優れた作品を生み出し続けました。その特異な楽器編成からも想像できるように、様々な音楽的要素が混合した独自のサウンドを生み出したグループです。


この「遥かなる丘」は、ラルフ・タウナーの手による作品の間に、メンバー全員のフリー・インプロヴィゼーションが挟まるといった構成になっており、彼らのアンサンブルの巧みさを堪能するにはうってつけの作品といえるでしょう。とにかく楽器を美しく響かせるグループで、コリン・ウォルコットの奏でるタブラ、シタールといったインドの楽器が過剰なエスニックの臭みを出すことなく、ギターやイングリッシュ・ホルンといった楽器と自然に溶け合っているのが素晴らしく、彼らのアルバムを何度でも聴き返させる要因となっています。クラシカルな気品すら感じさせる、独自のチェンバー・ミュージックを彼等4人は発明したのでありました。フリー・インプロヴィゼーションでも、しっかりと調和がとれたバランス感覚を発揮しているのが見事です。
そんな彼等の魅力は、このアルバムでは冒頭の「極光」に端的に現れています。静かなピアノの和音にタブラがリズムを刻み、フルートからオーボエに美しいテーマ・メロディが受け継がれていく最初の1分半で、聴く者誰もがきっと「このアルバムを手にして良かった!」と思わずにはいられないでしょう。


このアルバム、音楽仲間のショック太郎さんが国内盤のライナーノートを書かれています。ロック/ポップスファンとしての視点から、オレゴンの音楽性を、ジャズやワールド・ミュージックに留まらず、ポポル・ヴーやエンブリヨといったジャーマン・プログレのグループと比較したりしている大変面白い文章を書かれているので、ぜひご一読をお勧めします。