7/24 松岡正剛千夜千冊達成記念パーティー「これでだめなら、日本は闇よ」at 原宿クエストホール

7月7日に千冊達成したばかりである、松岡正剛「千夜千冊」の達成記念パーティーに行ってきました。申し込んだ当初はパーティーだから2,3時間ぐらいだろうと思っていたら、終了が6時間後の21:30と知ってどうなることかと思っていましたが、実際にはあっという間に時が過ぎていきました。たいへん濃密な内容でしたね。


開演30分前の15:00に到着したのですが、既にほぼ満杯の盛況ぶり。なんとか席を確保して、たまたま隣に座った方とおしゃべりしながら会場を観察。正面のステージには今夜発表された千夜千冊を収める書棚を分有するというプロジェクト「燦架」*1の書棚が配置されています。そして会場中ほどの右横にサブステージ。後方には左右に赤提灯と白提灯がぶらさがった物見台のような椅子が置かれていました。


司会はいとうせいこう。彼の軽いノリのしゃべりが、物々しくなりがちな雰囲気を上手く緩和していました。基本的な進行は、「千夜千冊」からいくつかピックアップされた書物について*2いとう氏と正剛氏が、時に著者を壇上に招いてトークを行うといった構成。しかし、随所に今後のプロジェクトの発表やサブステージでの演奏などが挟まれており、これが音楽ファンにもたまらないものになっていました。


特に印象に残っているものをいくつか。まず有吉佐和子「一の糸」がとりあげられた時に登場した本條秀太郎の三味線と歌。細野晴臣との共演歴もある方なので名前だけは知っていましたが、生演奏を聴くのは初めて。つややかな歌声と冴える弦の響きが軽やかで粋なことこの上ない。これは本腰いれてこの辺も聴かなくちゃだめだなあ。
三味線では、北園克江の詩「BLUE」に曲をつけて歌った女流奏者(名前失念・・・素晴らしかったのに申し訳ないです)も見事なものでした。


清楚な黒のドレスを纏い、しっとりした声で尾崎翠をとりあげた文章を朗読した真行寺君枝も良かったです。控えめな態度だったのにどことなく華を感じました。


休憩を挟んで第2部の幕開けは坂田明のサックス・ソロ。「雨降りお月さん」ではヴォーカルも披露してくれたのが個人的にはうれしい。


土方巽をとりあげたところで、即興の舞踏を披露したのは田中泯。ステージで話していたときは枯れた老人としか思えなかったのに、いざ舞が始まると、狂気すら時に感じさせる圧巻のパフォーマンス。静から動、動から静への移行のダイナミズムがとにかくすごかった。


これだけでもお腹一杯ですが、トークもそれぞれユニークでした。高山宏が以外とくだけた感じだったのが個人的には意外に思えるなど、知っている著者については新たな発見も多かったのですが、特に印象的だったのは「やくざと日本人」の著者、猪野健治いとうせいこうが冗談めかして「この人がやくざじゃなわけじゃ無いんですよ」と言ったのも納得の、なんだか跡目を若いもんに譲った大親分といった貫禄と、伝法な話しっぷりがめちゃめちゃ面白かったです。山口昌男は入院先からのヴィデオ・メッセージを届けていました。これはちょっと痛々しかったなあ。


最後を締めたのは、松岡本人による第1000夜「良寛全集」の朗読。良寛の長編詩「月の兎」を淡々と、しかし思いをこめて読み上げていきましたが、こみあげるものがあったのか、言葉をつまらせ「これ以上は読めません」と言って終了。本人にしかわからない万感の思いがあったと思います。本当にお疲れさまでした。

*1:希望者が好みの一冊を「千夜千冊」から選んで申し込むと、松岡正剛が「千夜千冊」以外の本を2冊加え、さらに書画を書き描いた書棚が届けれるというもの

*2:ステージに抜粋された文章が映し出され、銀河万丈の朗読によりそれが読み上げられた