YMO「テクノドン」(ASIN:B00000766C)

huraibou2004-07-13

なんだかファンも本人達もこのアルバムはなかったことにしようとしてるように思えるのは気のせいでしょうか?再結成のお祭り騒ぎの最中に出たにしてはあまりに地味渋なアルバム。とはいえ、細部までしっかりと造りこまれているせいもあって、案外聴きあきない出来です。今にしてみると、「BGM」〜「テクノデリック」の流れでなるほどこうなるか、と思えますね。悪くない。しかし、必ずしも本人達が望んだ形の活動再開ではなかったせいか、全体に生気が感じられないのが欠点。バロウズやジョン・C・リリー、ウィリアム・ギブソンの参加が単なるファッションにしかなっていないのもマズい。当時最もYMOというグループについて明確なヴィジョンを持っていたと思われる幸宏の単独曲が全然無いところに、まさしく「中を取り持つ太鼓もち」だったであろうツライ立場が見え隠れするような・・・。ただし、当時のテクノ、アンビエントを意識しつつ、それをYMO流にポップ化するというコンセプト自体は悪くなかったと思うのです。特にアルバム後半の教授色が強い「Silence of time」から底に濃いメロディが脈打つ「Waterford」ときて、細野流テクノ・ニューオリンズ・ファンク「OK」と続くくだりは本作随一の聴きどころとなっており、ここにはYMOではないと成し得なかった音楽が確かに聴こえてきます。最後の「ポケットに虹がいっぱい」のカヴァーはご愛嬌。「ポケット・・・」とならんでカヴァーの候補にのぼっていたというトラフィックの方が聴いてみたかった。
「テクノドン」から早や10年以上が過ぎ、細野と教授の和解もなった現在はさっぱりとYMOの看板を降ろし、3人で活動するときはヒューマン・オーディオ・スポンジと名乗っているようです。これにどこまで期待していいものかなんとも判じかねるのですが、今年のSonarで、なんと「Riot in Ragos」を演奏したなんて話を知ると、なんかまだやらかすのではと、ちょっぴりワクワクしちゃいますね。まあ、期待しているのと全然ちがうことをやるのも彼らの得意技だったわけですが。