「宇野誠一郎作品集 Ⅰ」(ASIN:B00025E1TE)

宇野誠一郎

大人になって 「メルモちゃん」 のテーマを聴き直したら、その美しさに泣いてしまった。
宇野誠一郎氏の音楽を形容するなら 「ファンタスティック!」 これ以外にない、と思います。
小西康陽

待望の作品集。上に引用した小西康陽の言葉はウソじゃない。そのドラマティックで美しいメロディライン、奇想天外なオーケストレーション、弾むリズム、どれもがファンタスティックで感動的なのです。涙流れるのはノスタルジアだけのせいではないはず。以前とりあげた「ひょっこりひょうたん島」や「ムーミン」などは収録されていないのですが、それでもかつて親しんだ名曲、初めて耳にする佳曲がずらりと30曲(中山千夏のアルバムに提供した曲が素晴らしい!)。すっかりヤラレてしまいました。私にとっては何よりもそのメロディが最大の魅力なのですが、ブックレットに掲載された宇野自身の言葉には「実のところ、僕はメロディには全く関心がないんですよ」なんてあったりするので、参ってしまいます。しかし全く関心がない人があんな美しいメロディを思いつけるものなのか。一方、ずっと探求していたというリズムについては素直にうなづけるところであります。「悟空の大冒険マーチ」のスリリングな展開には圧倒されましたし、数曲あるワルツ・ナンバーの優雅さがまたいいんだなあ。そして優雅さといえばラストを飾る「幸せをはこぶメルモ」です。涼しげなオルガンの響きと柔らかくリズムを刻むギターは、ボサノヴァに限りなく接近。エレガントかつクールなサウンドがたまりません。第2弾の作品集発売が待ち遠しいところであります。


一方、宇野も数曲を提供している「21世紀のこどもの歌」21世紀のこどもの歌 も同時に発売されました。こちらは小松左京が監修を務め、宇野のほかには越部信義小森昭宏山下洋輔も参加しているので、やはり聴き逃せないところ。宇野はこのアルバムの制作にアープ2600を導入。そのためこのアルバムは日本で最初にシンセサイザーを本格導入したアルバムとなっています。しかし未来の通信手段をテーマにした「ファクシミリ・マーチ」なんて曲名には時代を感じますねえ。