4/16 UNIT・RANCONTRE live at MANDARA南青山

UNIT・RANCONTREとは、ピアニストの中川賢一、リコーダーの鈴木俊哉、パーカッションの斉藤ノブからなるユニット。中川・鈴木は主に現代音楽の分野で活動、斉藤ノブはポップ・ミュージックで活躍しているので、異種格闘技の趣があります。この異色の顔合わせは、夏木マリの舞台「印象派」のステージの音楽監督を中川が務めたのがきっかけだとか。プログラムにはプロコフィエフ、ファニホウ、リュック・フェラーリといった現代音楽、しかもそのなかでもかなりのツワモノの名前が並ぶので、ライブハウスには似つかわしくない種類の緊張感があるステージになるかと思いましたが・・・実際には、ユーモアたっぷり、笑いのあふれるステージでした。もちろん決めるところはビシっと決めていましたよ。


ギネスを飲みつつ時間を待っていると、まずは斉藤ノブが登場し、パーカーション・ソロ。一見、軽々と叩いているようで、軽やかなパッセージや重低音まで幅広い音色を自在に紡ぎ出すのは流石。そして中川・鈴木が入場し、そのままプロコフィエフのピアノ・ソナタ第7番第3楽章になだれこみました。パーカッシヴな演奏は、70年代の山下洋輔トリオや、セシル・テイラーを彷彿とさせる瞬間もある、スリリングなものでした。


続く2曲目はフリー・インプロヴィゼーション。まずはグランドピアノに3人が集まって、内部の弦をひもでこすったり、ボールをころがしたり、下に潜って胴をたたいたりのパフォーマンス。その様は、ピアノという動物に3人でじゃれあってるようでした。徐々に自分の持ち場について、前曲より激しい演奏を展開。途中、中川が激しく鍵盤を叩いているさなかに鈴木がバケツ一杯のピンポン玉をピアノの中に注ぐと、弦の震動によりピンポン玉があふれ出てそこらぢゅうにこぼれ落ちたところで笑いと拍手がおこりました。


ピアノとパーカッションに挟まれると、リコーダーはどうしても音量的には不利。しかし3曲目はリコーダー・ソロによる、ファニホウの「ユニット・カプセル」。鈴木の超人的なタンギングや特殊奏法をたっぷり堪能できました。軽くディレイ・エコーがかかっていて、音響的にもおっと思わせる場面もしばしば。


さて、中川によるユーモラスなMCの後、この日の会場に笑いの渦をまきおこしたのが、「テーブルの音楽」。むくつけき(失礼!)3人の中年男が横長のテーブルの前にすまして着席。一人が無言で両手を前につきだしテーブルをぎゅっとこすると、残りの二人も同じ動作を繰り返すところからスタート。こする動作が叩く動作に代わってしばらくしたところで、やおら斉藤ノブが金属製のザルと泡だて器をテーブルの下から取り出し、ギロのようにこすってリズムを取り出すと、中川・鈴木両氏もザルと泡だて器で演奏開始。ここから中川vs鈴木のパフォーマンス合戦がスタート。基本的に鈴木がアヒル笛等のおもちゃの楽器を取り出すと、中川がそれより一回り大きい楽器を取り出すというパターン。中川のパフォーマンスはだんだんエスカレート。ついにはシャボン玉を吹き出したり、紙製の笛で絶叫しながらピコピコハンマーで斉藤ノブの頭をはたく、といったご乱行に及ぶに至り、会場は大爆笑でした。


最後を締めたのは、リュック・フェラーリ「失われたリズムを求めて」。重低音の電子音がドローンで流れるなか、3人の白熱した応酬が展開されました。終盤になって重低音がキラキラした音の粒子に変わると、ミラーボールが回りだし幻想的な雰囲気を盛り上げてステージは幕を閉じたのであります。


現代音楽とポップ・ミュージックを安易に折衷することなく、現代音楽の流儀でエンターテイメントしてくれたところに好感を持ちました。今後も継続して活動してもらいたいものです。