AYUO/HIROMI OHTA「RED MOON」(ASIN:B000127Z4Q)

huraibou2004-04-21

太田裕美はもちろん「木綿のハンカチーフ」を代表とする数々のヒット曲をもつシンガーなのですが、王道のポップ・ミュージックだけではなく、様々なサウンド・アプローチを試みる面も持っている懐の深さがあります。結婚前では、渡米後のテクノ・ポップへのアプローチなどがそれにあたるでしょう。また琴の沢井一恵や、現代音楽の高橋悠治とも共演歴があり、私はかつて築地本願寺で行なわれた高橋悠治のライブで彼女がゲスト・ヴォーカルとして出演したのを見たこともあります。
さて、このアルバムは悠治の息子の高橋鮎生とのコラボレーション。レーベルがジョン・ゾーンのTZADICからというのは驚きですが、ジョン・ゾーンはかつて太田裕美の声に魅せられ、自作にナレーションとして起用したこともあるのです。
この「Red Moon」で聴くことのできる音楽は、鮎生の追求している「ネオ・トラッド」に基づいたもので、インドや東欧など様々な民族音楽の要素を、ギター、サンプリングなどを駆使して組上げた音楽。「竹田の子守唄」や「庭の千草」もとりあげています。時に音数が多すぎるかな、と思うこともあるのですが総じて完成度は高く、太田の甘い声が適度なポップ性を与えています。それにしても声を含めて、未だ「木綿のハンカチーフ」時代の面影を失っていないのには驚き。