ジャック・ディジョネット&レスター・ボウイ「ゼブラ」(ASIN:B00005GFVN)

zebra

85年作。写真家、内藤忠行の同名ヴィデオのためにジャック・ディジョネットが録音したものです。全5曲中、3曲にトランペットでレスター・ボウイが参加しているとなると、ドラムとペットの丁々発止のインタープレイを期待するところですが、あにはからんや、ここでのディジョネットはドラムは一切使用せず、シンセサイザー1台とドラム・マシーンだけでこの音楽をつくりあげたのです。
シンセの音色は、85年時点でもちょっとチープな感じがあるものなのですが、驚くことに音楽そのものは安っぽいものになっていないんですね。チープな音色ではあっても、ひとつひとつ吟味され、淡い色彩感をもった、アフリカのサヴァンナのごとき広がりのある空間を演出。リズムも派手さはないけれども、かなり多彩(もちろんアフリカ的なビートもあり)で、今の耳で聴いても十分刺激的。トータスやシカゴ・アンダーグラウンド・デュオ辺りを連想する人がいても不思議ではなく、現にこの再発盤にはシカゴ・アンダーグラウンド・デュオのボブ・マズレクがコメントを寄せております。
レスター・ボウイのトランペットも素晴らしく、滑らかなフレージングから、獣の鳴き声を思わせる特殊奏法まで、幅広い表現を用いて活躍。この音楽にエモーショナルな要素を加えています。チープな機材でもセンスある人が使うと、イマジネーションに満ちた音楽ができることの見本のようなアルバム。