パトリック・ガロワ他「ウオーター・ドリーミング/武満徹フルート作品集」(ASIN:B00005FJ6R)

ウオーター

最晩年の作品に、フルート独奏の小品「エア」があることからもうかがい知れるように、武満にとってフルートはことのほか愛着のあった楽器だったと思われます。いくつかの曲では尺八のような音色を出させているのがあり、「日本で西洋音楽に影響を受けた音楽をやることの意味」を常に問い続けていた彼にとって、フルートとは日本と西洋が交じり合う場の一つではなかったのだろうか、なんてことも考えてしまいます。


このアルバムは、冒頭の表題曲「ウオーター・ドリーミング」こそ、オーケストラとの「フルート協奏曲」という形態をとっていますが、残りの曲は室内楽の編成によるもの。アルト・フルートが瞑想的な旋律を静かに歌い上げる名曲、「海へ」が3バージョン収録されているのがうれしい。「Ⅰ」「Ⅱ」「Ⅲ」とそれぞれ、バックがギター、弦楽オーケストラ、ハープとなっているのですが、同じメロディがバックの編成によって、それぞれ微妙な表情の変化をもたらされているのが聴きどころ。フルート、ヴィオラ、ハープという、ドビュッシーソナタと同じ編成で書かれた「そして、それが風であることを知った」も繊細なアンサンブルが美しく好きな曲・・・というように、オーケストラ、二重奏、トリオ、ソロ・・・どんな編成であろうと生み出される「武満トーン」をたっぷり味わえる好アルバムになってます。