タウン・アンド・カントリー「カモン」(ASIN:B00005UMXG)

カモン

シカゴ音響派、という言葉がなかったら、現代音楽の棚に置かれていても不思議ではない一枚です。アコースティック・ギター、ベースを初め、ハンド・チャイムやバス・クラリネットコルネットなど使われている楽器はすべてアコースティック。そしてモートン・フェルドマンに影響を受けたと語っている彼らの音楽は、ゆるやかな時間感覚と反復を基調とした、繊細なアンサンブルによって生み出されたチェンバー・ミュージック。新しいタイプの室内楽といった方がふさわしいと思えるのです。
やわらかに響く楽器の音色に、つい「牧歌的」という形容を使いたくなりますが、彼らの音楽は、牧歌的という言葉からも、エキサイティングな、という言葉からも遠いところにある地点で響いています。もちろん凡庸ということではなく、聴く者のテンションを一種のプラトー状態にするんですね。より深く耳を傾けるにつれて、精神が覚醒していくような感覚が快い。「ゴーイング・トゥ・カマクラ」なんて曲名にだまされてはなりませんぞ。