マリアンヌ・フェイスフル「妖精の歌」(ASIN:B00005V2I3)

妖精の歌


妖精といわれても既に一児の母親だったマリアンヌ・フェイスフル。ヒット曲「アズ・ティアーズ・ゴー・バイ」を経て、ストーンズ周辺との関係も深まってきた66年に発表されたこのアルバムは、渋いフォーク路線の作品になっています。渋いとはいっても当時はフォーク・ロックが勃興してきたころですから、これはこれできちんとマーケットを見据えたプロダクションなのでしょうね。アレンジをジョー・マークとミック・テイラー(あのミック・テイラーとは別人)が手がけ、アコースティック・ギターを中心としたシンプルなサウンド。エンジニアにはガス・ダッジョンが起用されてます。選曲はトラッド・ナンバーを中心にバート・ヤンシュやドノヴァン「陽の当たるグッジ街」などがとりあげられ、サイモン&ガーファンクルで有名な「スカボロー・フェア」も歌ってます。シンプルなギターの伴奏をバックにしっとりと歌っていて、素朴な味わいながらなかなか聴かせますよ。表題となった「北国の少女」も曲調とマリアンヌの声質が上手くマッチした良い出来です。じっくりと耳を傾けるに足る好アルバムといえるでしょう。
このアルバムからおよそ一年後、マリアンヌ・フェイスフルはミック・ジャガーと一緒に全裸でマリファナを吸っているところを逮捕されて話題になります。「妖精」から「シスター・モーフィーン」へ。しばらくして復帰したとき、彼女の声はすっかり枯れはててしまったのですが、彼女の音楽が広がりを見せるのはむしろここから。ハル・ウイルナーがプロデュースした「ストレンジ・ウェザー」や、クルト・ワイル作品集など力作を次々と発表して、現在も活発に活動中です。