ケヴィン・エアーズ「Whatevershebringswesing」(ASIN:B00008Y2IW)

ホワットエヴァー・・・

カンタベリー・ミュージックの代表的なグループ、ソフト・マシーン創立時の中心メンバーだったのに、1st発表後、ライヴ・ツアーに疲れてあっというまにスペインのイビサ島へおさらばしてしまった、生粋のボヘミアン体質のケヴィン・エアーズ。初期の彼のソロはそんなまったり感とアヴァンギャルドな音楽性がブレンドされたストレンジな作品ばかりなのですが、その中でもとびきりの一枚が72年発表のこれ。元々は現代音楽畑のデヴィッド・ベッドフォードによるオーケストラ・アレンジが冴える実験的なナンバーや、おどけたディキシー風の曲ありと前半はヴァラエティに富んだストレンジ・ポップの世界が繰り広げられています。しかしこのアルバムの真の聴きどころは後半、LPではB面にあります。ハイライトはタイトル曲「Whatevershebringswesing」。ゆったりとしたベース・パターンとまろやかな音色のギター、ケヴィンの甘い低音のヴォーカル。そしてバック・コーラスがロバート・ワイアット!この二人が一緒になって
「だからワインを飲んで楽しく過ごそう
だけど君が人生を本当にうまくやりおおせたかったら
幸福が君を必要とするように
幸福に求められる人間になるように生きなきゃならないのさ」
なんて歌っちゃうのですからたまりません。ポップな「ストレンジャー・イン・ブルー・スエード・シューズ」、「シャンペン・カウボーイ・ブルース」を挟んでアルバムの最後をしめくくるのはインストゥルメンタルの小品「ララバイ」。水のせせらぎの音の上にピアノとフルートがシンプルなメロディーを紡いでいき、最後はせせらぎの音だけが残るという、たまらなく美しいエンディング(LPではせせらぎだけが延々と止まらないように溝をカッティングしていたそうです)にうっとりです。
時折過去の音源の編集盤は出るけれど、もうずいぶん新作とはごぶさた。マイペースなのは重々承知だけど、そろそろまた素敵な新作を届けて欲しいですね。まあ焦らずにワインを飲んでまったり待つとしましょうか・・・。