ブラッド・メルドー「ソングス:アート・オブ・ザ・トリオ Vol.3」(ASIN:B0000565B8)

メルドー

ブラッド・メルドーは1970年生まれのジャズ・ピアニスト。近作「LARGO」で従来のジャズの枠に囚われないアンサンブルの形を追求していたブラッド・メルドーですが、一番力を入れているのはやはりピアノ・トリオでしょう。ドラムのホルヘ・ロシイ、ベースのラリー・グレナディアからなるトリオでの一連の作品を「アート・オブ・ザ・トリオ」と銘打ってリリースしているうちの、3枚目の作品が今回取り上げた「ソングス」です。
「ライブ演奏時は、曲は、どちらかというとインプロヴィゼーションのための手段として機能することが多いけれど、今回はスタジオ録音なので、焦点を変えて、メロディやハーモニーの美しさを引き出し、そのエッセンスをいかに凝縮し、小作品に落とし込むか、を課題にしてみた」と語るメルドー本人の言葉通りの作品で、(本人は嫌がってますが)しばしばビル・エヴァンスに例えられる美しいピアノのサウンドがコンパクトにまとめられた楽曲を通して堪能できます。
とはいえ、彼はほぼ私と同世代。やはり現代的なアプローチをしているところが多いのです。最もそれがわかりやすく出ているのが選曲でしょう。「魅惑されて」のようなスタンダード・ナンバーも取り上げていますが、目を引くのはレディオヘッド「エグジット・ミュージック(フォー・ア・フィルム)」とニック・ドレイク「リヴァー・マン」。決して奇を衒うことなく、自身の美学に則り演奏されているところがポイント。彼自身の自作曲もなかなかの出来栄えです。ストレート・アヘッドなジャズの新譜を購入することは滅多にないのですが、この人は別。今後どのように自分の音楽を発展させていくのか、行く末が楽しみです。