松田行正「ZERRO」(ISBN:4434038656)

今日はずっとスパンクスを聴いていたので、久々の本ネタです。
一風変わったオブジェとしての本を出版し続けている奇特な出版社・牛若丸から出た本で、音楽聴きながら眺めているにはぴったりです。


普段の私たちはひらがな、カタカナはもちろんのこと、アルファベットや数字など様々な記号に取り囲まれて生活しているわけですが、この本は普段よく見るものから、なかなかお目にかかれないもの、既に使用者が絶えてしまったものに至る、古今東西の記号のカタログです。見開きで左ページが解説、右ページがその記号群という構成で、右だけ漫然と眺めているだけでも充分楽しめるものです。


モールス信号や点字といった比較的なじみのある記号から始まって、ヘブライ文字ヌミディア文字等の未知の言語、更には小鳥のさえずりシラブルに至るまでその多彩さに圧倒されたり、舞踏や人間の動きを記号化したものを見るにつれ、森羅万象に対する人間の限りない「記号化」への欲望の業を感じたり。文化人類学者のバードウィッスルが考案した顔の表情記号なんてAAの元祖ともいえそうで、思わずにんまり。もちろん音符も登場。そしてこの本の最後に登場するのは、周波数によって砂が描く幾何学模様を記号化した、クラドニの音図形です。解説によると、このドイツの物理学者は音響学に多大な功績を残した人で、ついにはブラバンでおなじみの楽器ユーフォニウムまでつくってしまったそうで、これには思わず83へぇーを進呈(って私が無知なだけか)。序文にはレッド・ツェッペリンの4枚目のオリジナル・アルバムの話題もでてきます。