スパンクハッピー「ヴァンドーム・ラ・シック・カイセキ」(ASIN:B0000DJWAX)

シックなカイセキ

これは中毒性があります。本来はデザート・ワインとして、最後に一杯だけ飲めばいい高級甘口白ワインのソーテルヌをたて続けに飲んで、うっとりとしたまま酔いつぶれてしまったような聴後感。目覚めたら甘美な余韻と頭痛に襲われる。
・・・と書いてみても、既に彼ら自らが「最後の贋作の宝石」とか「憂鬱で濃厚なドレスアップ・ダンスミュージック」と書いていることの屋上屋を架すことにしかならないのですが、ともあれ期待以上の出来栄えに大満足です。前作ではトラックメーカーの個性が強く出すぎていて、ばらけていた感もあったのがここではそれぞれが同じ方向を向いていて、全体を覆うムードに統一感が出ました。前半の妙にぶよぶよした感触の低音部がもたらす奇妙な快感。フランス語と英語と日本語がとびかい耳をくすぐるヴォーカルの快感。知性に裏打ちされたアンニュイな世界にどっぷりはまった終盤、おもむろに始まるのがよりにもよってオリビア・ニュートン・ジョン「フィジカル」のカヴァーという秀逸な構成。結構身構えて聴き始めたのに、気がつけばあっけなく翻弄されてしまって我ながら苦笑を禁じえませんね。菊地本人のサックスがたっぷり聴けるのもうれしいです。