安田成美「NARUMI YASUDA」(ASIN:B00004W9M4)

安田成美

せっかく「ナウシカ・ガール」に選ばれたのに、勝手に進められたキャンペーンに宮崎駿が怒ったため、映画ではついに流れることがなかった名曲「風の谷のナウシカ」を含むテクノ歌謡の傑作。歌入れに立ち会った松本隆細野晴臣が絶句したとかしないとか、ラジオから流れてきたこの曲を聴いてユーミンが「あ、私が歌ってる」と思ったとか*1、そのお腹にまるで力の入っていない天然ウイスパー・ヴォイスの衝撃を物語るエピソードには事欠きません。私も初めて聴いたときは、これでいいのか、大丈夫なのかと妙に心配になりました。後に沢口靖子の歌を聴いたときにも同じ気持ちになりましたが、ある意味スリリングな体験だったといえるでしょう。そんな安田成美の声の魅力がたっぷりと味わえるのがこのアルバム。プロデュースが高橋幸宏で彼の「薔薇色の明日」を薄めにしたようなマイルドなサウンドで彼女の声を包みこみます。「ナウシカ」を含む3曲のアレンジは荻田光雄で、こちらもいい仕事。曲を提供しているのは前述の細野、幸宏以外に大村雅朗鈴木慶一という豪華な顔ぶれ。慶一曲「SUEはおちゃめなパン屋さん」は作詞が鈴木博文。この兄弟の合作曲はありそでないので*2、貴重です。これだけの顔ぶれを揃えながら「いじっている」感がないのはプロデューサー・幸宏のセンスの賜物ではないでしょうか。いじりようがなかったかもしれませんが・・・。ともあれ主役は安田成美のヴォーカルです。無表情のようで、よく聴くとその揺れる音程が少女の揺れる心の表現のようにも思えるから不思議。ウイスパー・ヴォイスが苦手な人以外なら一聴の価値ありです。今、突然思いついたのですが、現在ならモーニング娘。紺野あさ美がこれと似たようなテイストのものを作れるかも*3。実は彼女の歌声をあまり意識したことはないんだけど、話してる声からの印象です。つんく、ここはひとつやってみてくれないかな?やらないだろうなあ。

*1:ユーミン・ファンには申し訳ありませんが、私は安田成美の声の方が好き

*2:THE SUZUKIの「Everybody's in Working Class」にも合作曲はありません

*3:石川梨華道重さゆみだとスターボー的になると思う