第19回セレクト合戦“ベスト・オブ・ハル・ウィルナー・ワークス”

今回のテーマは「好きなバンド、アーティスト、スタッフ(プロデューサー、アレンジャー、作曲家、作詞家etc)、レーベルなど、ばかりを集めたベスト・オブ・セレクト。またアーティストはもちろん、自分が尊敬する人物、感銘を受けた絵や 映画、好きな土地などに対するトリビュート・セレクト」 という長いもの(笑)。私が選んだのは“トリビュートといえばこの人しかない!”ということで「ベスト・オブ・ハル・ウィルナー」でした。トリビュート・アルバムの名作を多く残してきた彼に対するトリビュート・アルバムをベスト盤という形でつくってみようということです。選曲は彼が制作したトリビュート・アルバムからだけではなく、単独アーティストのプロデュース作や、映画のサントラ盤のプロデュース作品からも選びました。トリビュートとプロデュース、どちらがお好き?という訳でジャケットには「T or P?」と謎のタイトルを記しています。

1)Dr. John:Blue Monk

Tribute to Thelonius Monk

Tribute to Thelonius Monk

まずはセロニアス・モンクのトリビュート作からスタート。ジャズ専門誌「ダウン・ビート」のレコード・オブ・ジ・イヤーを獲得した名作で、ロック畑のミュージシャンと、モンクゆかりのジャズ・ミュージシャンをバランスよく起用した聴きごたえのあるアルバムです。ここではドクター・ジョンが得意のよく転がるピアノ・スタイルで「ブルー・モンク」を料理した演奏を取り上げました。

2)Lou Reed:September Song

Music of Kurt Weill

Music of Kurt Weill

自分のセレクトにルー・リードを選曲するなんて我ながら意外(笑)。クルト・ワイルへのトリビュート作『星空に迷い込んだ男』からの選曲です。スティング、カーラ・ブレイトッド・ラングレンなどの名演がぎっしり収録されたこのアルバムから誰を選ぶか、かなり迷ったのですが、ルー独特の歌いまわしが楽しかった「セプテンバー・ソング」をセレクト序盤の景気づけの意味も含めて選びました。別の理由もあるのですが、それは次の曲の解説で。

3)Laurie Anderson:Dark Angel

ライフ・オン・ア・ストリング

ライフ・オン・ア・ストリング

この曲は以前「女性ヴォーカル・セレクト」の時にも選んでいる曲なのですが、恋人どうしのルー・リードローリー・アンダーソンカップルを並ばせたかったということと(笑)、ストリングス・アレンジがハルともつながりが深いヴァン・ダイク・パークスなので選んでいます。

4)Marianne Faithfull:Blazing Away

Blazing Away: Live

Blazing Away: Live

ハル・ウィルナーがプロデュースした女性アーティストでまっさきに思い浮かぶのがマリアンヌ・フェイスフル。スタジオ作「ストレンジ・ウェザー」に続いてリリースされたこのライヴ盤でもハルが引き続きプロデュースを手がけました。ジョン・レノンの「ワーキング・クラス・ヒーロー」のカヴァーも収録されている力作ライヴです。ただしこのタイトル曲はスタジオ録音。

5)Bono & Daniel Lanois:Falling At Your Feet

ミリオンダラー・ホテル

ミリオンダラー・ホテル

渋い曲が並びますね(笑)。これはサントラ盤からの選曲。U2のボノが主役ですがハルも力を貸しています。普段は裏方としてU2を支えているダニエル・ラノワがボノとデュエットしているというのもサントラならばこそ実現したのでしょうね。

6)Greg Cohen, Chuck Leavell, Keith Richards, Charlie Watts, Bobby Keyes, The Uptown Horns & Bernard Fowler:Oh Lord, Don't Let Them Drop That Atomic Bomb on Me

Weird Nightmare: Meditation on Mingus

Weird Nightmare: Meditation on Mingus

異色の現代音楽の作曲家、ハリー・パーチの創作楽器をフィーチュアした演奏を数多く含むチャールズ・ミンガス・トリビュート作から。この演奏では創作楽器は使用されていませんが、ジャズ好きを公言しているチャーリー・ワッツはともかく、キース・リチャーズにミンガスの曲をやらせるというアイディアが光ります。私のセレクトではこれまで出てこなかったブルージーな曲調ですね。

7)Lucinda Williams:Learning How To Live

ウエスト

ウエスト

ルシンダ・ウィリアムズのプロデュースを手がけたと知ったときには意外に思いましたが、出来上がったアルバムは良い曲が並ぶ充実した仕上がりになりました。この曲もシンプルだけど味わいのあるメロディーを持った佳曲です。

8)三宅純:CA FAIT LONGTEMPS

星ノ玉ノ緒

星ノ玉ノ緒

現在は主にパリで活躍している三宅純。彼の多彩な音楽性がハルのプロデュースによってうまく引き出されたアルバム「星の玉の緒」から、ちょっとカリプソ風味の曲をセレクトのアクセントとして選んでみました。最近はアート・リンゼイとの共演が多い三宅ですが、新作ではハルが推薦コメントを寄せているので良好な関係は続いているようです。

9)O'Hara, Mary Margaret and Eric Mingus:Ac-Cent-Tu-Ate The Positive

ストーミー・ウェザー~ハロルド・アーレン作品集

ストーミー・ウェザー~ハロルド・アーレン作品集

ジム・スコットやルーファス・ウェインライトも参加しているハロルド・アーレン作品集から、毛色の変わったジャジーな一曲をどうぞ。

10)Aaron Neville:Mickey Mouse March

Stay Awake: Various Interpretations of Music from Vintage Disney Films

Stay Awake: Various Interpretations of Music from Vintage Disney Films

あの快活な「ミッキーマウス・マーチ」が甘〜い子守唄に生まれ変わりました。アーロン・ネヴィルのとろけそうな歌声を堪能してください。個人的にハル・ウィルナー関係の最高傑作と思っているディズニーのトリビュート・アルバム収録。

11)Israel Kamakawiwo'ole:Over The Rainbow / What A Wonderful World

マイルス・デイヴィスオーネット・コールマンの演奏がずらりと並ぶこのサントラ盤にそっと置かれた美しい歌と演奏。イズレエル・カマカヴィヴォオレ はハワイではかなりの人気とか。深みのある声が素晴らしいですよね。そして「虹の彼方へ」がさらりと「この素晴らしき世界」へつながるところの見事なこと!

12)Jaki ByardLa Strada

Amarcord Nino Rota

Amarcord Nino Rota

最後はやはり、ハル・ウィルナーがてがけたトリビュート・アルバムの記念すべき第1作からの曲で締めくくりましょう。ご存知フェリーニの名作「道」の主題曲です。冒頭のドクター・ジョンの弾むようなピアノと対をなす、ジャッキー・バイアードのしっとりとした演奏をお楽しみください。