第15回セレクト合戦「真夜中に聴きたい音楽」

今回のセレクトには「12 nightmares」というサブタイトルをつけています。悪夢、といってもおどろおどろしいものではなくて、孤独感や儚さを意識させる曲を並べてみました。周囲に誰もいない深夜にぽつんと聴くのが一番似合うようにつくってみましたがいかがでしたでしょうか?

1)富樫雅彦:「Whispering Stars」(1980)

収録アルバム『フェイス・オブ・パーカッション
日本を代表するフリー・ジャズパーカッショニスト、2枚目となるソロ・アルバムからの曲。ベルの音が星のまたたきと共に周囲をお祓いしているかのよう。小曲ですが“間”を生かした演奏を得意とする富樫の特質がはっきり出ている曲です。

2)高嶋みどり:「誰かが時を・・・Ⅰ」(1996)※演奏は山梨大学合唱団

収録アルバム『日本合唱曲全集 誰かが時を…/高嶋みどり作品集
木島始の詩を英訳したものに曲をつけた作品。元の詩は

きこえるかしら
誰かが時を動かしてるんだよ
きこえるかしら
何かが鳥を呼びよせてるんだよ

というもの。後半に出てくる鳥の鳴き声を模倣した部分が官能的です。作曲者の言葉を引用すると「曲はいきなり祝福された世界から開始されます。そしてそれは更に開かれた世界へと広がり続け、祝福された鳥たちが自在に飛び交いさえずりあう中を、まるで宇宙のど真ん中に吊り下げられた大きな振り子時計が壮大なスケールで時を打つかのようなシーンでクライマックスを迎えます」とのことです。

3)三輪眞弘:「Watch Jetzt Auf!」(2001)

収録アルバム

Soul Source presents“ROUTINE”Compilation

Soul Source presents“ROUTINE”Compilation

前半のピーク。小林径によるコンピレーション・アルバムに収録された曲です。
三輪眞弘は現代音楽畑の作曲家。コンピュータを用いて音楽、文章を再構成する手法が得意です。近年は「逆シミュレーション音楽」なるものを提示していますね。よくわかりませんが(笑)。この曲はミニマル・エレクトロな電子音に乗せて、さかいれいしゅうが架空の宗教の教義を唱えるという内容。私の中ではここまでが大きなブロックとなっています。ここで第1部終了、という感じ。

4)TICA:「Caroline No」(2003)

収録アルバム

レイテスト・ルールズ

レイテスト・ルールズ

もちろんビーチボーイズの大名曲のカヴァー。TICAにはこういったダークな感触の音が本当によく似合います。原曲の孤独感をうまく自分達のやり方で解釈しているカヴァーではないでしょうか。

5)Wechsel Garland & World Standard:「たんぽぽのお酒」(2003)

収録アルバム

ジ・アイル

ジ・アイル

エレクトロニカの代表的なアーティスト、ヴィクセル・ガーランドとワールド・スタンダードこと鈴木惣一朗の共作アルバムから。ワールド・スタンダード初期の代表曲の再演ですね。まだ見ぬ島へ静かに旅立つ2人・・・。

6)Vashti Bunyan :「Here Before」(2005)

収録アルバム

Lookaftering

Lookaftering

ブリティッシュ・フォーク伝説の歌姫、ヴァシュティ・バニヤンの35年ぶりとなる復活アルバムから。その儚い雰囲気は35年たっても全く変わっていませんでした。

7)Sami Abadi:「Aire Fresco」(2006)

収録アルバム『トロピカリズモ・アルヘンティーノ
“アルゼンチン音響派”を集めたオムニバス・アルバムから。音色の感覚が独特です。この次の曲の前奏曲的な役割もはたしています。

8)藤原大輔 feat.POKOPEN:「白い部屋」(2003)

収録アルバム『白と黒にある4つの色
ジャズとクラブ・ミュージックを独自の方法で融合することを模索しているミュージシャンのソロ第1作から。最近新作を出したばかりの「さかな」のヴォーカリスト、POKOPENの深みのある声が素晴らしい。

9)World's End Girlfriend :「Fragile Fireworks」(2001)

収録アルバム

farewell kingdom

farewell kingdom

今回のセレクト中最も激しい曲(笑)。独特な美意識をもつユニットの2ndからの曲です。“美しいものを破壊するときが最も美しい”という考えがこのユニットの根本にあるような気がしますね。

10)吉松隆:「水晶の小さなロマンス」※演奏は門光子

収録アルバム『東方逍遥〜ピアノによるアジアの音楽』(2003)
現代音楽の作曲家による組曲「6つのロマンス」の中の1曲。門光子の演奏は、イタリアの銘機ファツィオーリを使用したものでその美しい音色も味わってください。ヴェネツィア郊外の教会にて録音されていて、耳を澄ますと鳥のさえずりも聴こえてきます・・・。

11)Jimmy Scott :「Heaven」(1996)

収録アルバム

はたして悪夢から覚めると天国だったのか。90年代になって復活した伝説のジャズ・シンガーが「天国」をテーマにして発表したアルバムからの曲。トーキング・ヘッズ初期の名曲のカヴァーです。原曲もいいけど、これをここまでスピリチュアルに歌うとは驚き。絶妙に歌に寄り添っているピアノはジャッキー・テラソンによるもの。

12)Robert Fripp :「On My Mother’s Birthday」(2005)

収録アルバム

Love Cannot Bear

Love Cannot Bear

最後はロバート・フリップの最新ソロ・アルバムから。当初はエゴ・トリップにしか思えなかった一連のフリッパートロニクス→サウンドスケイプによるソロ・シリーズですが、いつしかこんなにロマンティックな、美しいものへと昇華していました。星のきらめきを思わせる音色で点描される旋律に陶然となります。



もし、このセレクトをご希望の方がいらっしゃったらお送りしますのでご連絡ください。