ダニエル・ドレズナー『ゾンビ襲来 国際政治理論で、その日に備える』

ゾンビ襲来: 国際政治理論で、その日に備える

ゾンビ襲来: 国際政治理論で、その日に備える

「ゾンビが地球上をのし歩き始めたら、様々に異なった国際関係の諸理論は、それぞれどのような予測を行うだろうか?」をテーマに、リアリズム理論、リベラリズムネオコン構成主義のケースが述べられ、更に国内政治の対応、官僚政治、個人の心理学的問題も語られます。ゾンビと国際政治理論の基礎が同時に学べてお得でした。今の日本の問題に当てはめて考えさせられたり、自分はどのタイプに近い考えをもっているかを見つめ直したりと、刺激を受けて啓発される点が多かったです。

おもしろマジメユーモアも多い点もこの本の長所。個人的にはこれまでの国際政治理論はゾンビ問題の学問的好奇心が欠乏していたことを指摘し、国際関係論の研究者や政策立案者などは、等しくゾンビの餌食となるに違いない」と指摘したくだりが特に面白かったです。

古典の書き手はリビング・デッドによって提起される問題を十分に意識していた。孫子はその『兵法』で「死地(death ground)に臨んだ際の戦いの重要性について強調しているが、これは明らかに不死者(undead)による切迫した脅威を予見している。(中略)トマス・ホッブスが自然状態を「絶え間ない恐怖と暴力的な死への危険に晒され、そこでの人間の生は、孤独で貧しく、汚らしく残忍で、そして、短い」と書き記した時、ゾンビは彼の心の中か、あるいは彼の家のドアの外にいた。(第2章 これまでのゾンビ研究より引用)